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「今日もヒヨは本読んでた!そっけなかった!」
「うんうん」
朝霧シンヤは、寝転がって漫画を読みながら、兄の話に相槌を打っていた。
「だからもう別れたいって言うんでしょ?最初からわかってた事だよ。だって青井さんとトウヤじゃ、釣り合わないもん。釣り合わない人同士が恋人になった場合、どうなると思う?レベルの低い方が高い方に尽くすんだよ。それで高低差を埋めるの。人間関係ってそんなもんだよね」
シンヤは一気に捲し立てる。
最近妙にドライになってきてるな、とトウヤは思った。
「それでもその人と一緒にいたいと思えるかがポイント。大抵の人は嫌になって自分に合ったレベルの恋人を……」
「ちが―う!それは違うぞ、弟よ。確かにヒヨは俺よりレベルが高いが、彼女は俺に尽くせとは一言も言っていない。ただ好きなことをしているだけなのだ!そして俺はそんなヒヨを見ているのが好きだ!」
トウヤは自信満々、笑顔でそう答える。
漫画を置いてトウヤに振り向いたシンヤは、こいつは一体何を言ってるんだ、という渋い表情をした。
「ああ、放置プレイが好きなんだ。トウヤってマゾだったんだね」
あっさり結論付けるシンヤ。
なるほどそれなら納得と、再び漫画を読み始める。
「ちがーう、俺はマゾではない、ヒヨが可愛いということだ」
指でスマホをなぞり、ヒヨの写真を表示するトウヤ。
それをシンヤに見せつける。
「もう言ってることがほとんどわかんないけど、翻訳すると、青井さんはとてつもなく可愛らしい。だから俺は彼女に仕えるマゾ奴隷になる!ってことか」
「全然違うわ!」
「で、結局マジで何が言いたいの?まさかのろけを聞かせるために、弟の部屋に侵入してきた訳?」
「その通りだ。俺の幸せ気分は俺の中にはとても収まりきらん。だから仕方なく、お前にも分けてやろうと思ってな」
「……」
シンヤは虫けらを見るような顔をする。
一昔前は、兄にこんな表情を向ける子じゃなかったはずだ、多分。
「ボクに彼女が出来ても、トウヤには知らせないから。あと家にも連れてこないから、安心して」
「何をだ!?」
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