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「ヒヨ、その本のタイトルなんだけど」
トウヤはヒヨが教室で読んでいる本を指さして言った。
生徒たちは部活動に勤しむか、さっさと下校するかがほとんど。
教室からは昼の喧噪が消え、一種切なげな雰囲気さえ漂っていた。
トウヤは午後の授業中ずっと死んだ獣のようであり、クラスメイト達の様子はさながら珍獣を見る野次馬のようであった。
しかしその間ずっとチャージしていたおかげか、トウヤは下校時には、生気を取り戻していた。
「この本?」
ヒヨは読んでいた本のブックカバーを外す。
そこには、こう書かれていた。
『銀河鉄道の夜』
「銀河鉄道の夜…」
何かテレビのアニメ特集で見た覚えあるな、とトウヤは思った。
だが詳しい知識はない。
「それってさ、どんな話なんだ?」
「トウヤ君、興味あるの?」
質問で返された。
今まで一回も興味示したことなかったんだから、仕方ないと言えば仕方ない。
「その、物凄く浅ましいとは思うんだけど、ヒヨが読んでるからさ。いつもそれを読んでたのか?」
「うん、そう。いつもね。どんなお話かって言うとね、とても寂しいお話…」
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