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「親父、おかえり」
「ただいま、トウヤ。出迎えなんて珍しいな」
「それはさ、ほら」
トウヤは少し上目使いで小遣いをねだるような物欲しげな表情をする。
「なるほど、これが欲しかったのか」
リュウジは革の鞄からクリアファイルに纏められた書類を出す。
「全く、疲れて帰ってきた父を労う前に、おねだりとはな…」
「悪かったよ親父。でも大事なことなんだ」
「前にも断わったが、マスコミ用に編集されたごく表面的な情報だけだぞ」
「それで十分」
トウヤは早く中身を確認したくて、話しながらリュウジに背を向ける。
「トウヤ!」
その背中にリュウジが声をかける。
「頑張れよ」
「…親父」
リュウジは全て理解したように、息子を柔らかな笑顔で見つめていた。
これから苦難に立ち向かう息子を応援する、父の顔だった。
「ありがとう、親父」
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