渚にて

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   人気のない、静かな午後の海岸。  アリスは、スカートの裾を両手で摘み、波に足を浸していた。    波はアリスの足を掴んでは離れていく。    それが猫とじゃれている時のようで面白い、と彼女は言っていた。  彼女の想像力には、いつも驚かされる。  「ほら、アデルもこっち来て」  彼女がその腕を僕に差し出す。シミやシワのないなめらかな白い肌は、人形以上に美しい。  「僕もかい?今、波と戯れるアリスの様子を、小説に書いてるんだけどなあ」  「それよりもっと面白い話を考えたの」  お姫様のお呼びとあらば、仕方あるまい。  それに彼女の言うとおり、僕の小説なんかより、アリスの話の方がよほど面白い。  さあ、聞かせておくれ。とめどなく自由で、時に残酷で、無限の好奇心に満ちた、君の物語を――。           
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