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学校の屋上。
日が落ちて、町には夜の帳が降り始める頃。
空は藍色に染まり、夜の始まりを告げていた。
トウヤは、ヒヨに呼び出されて、ここに来ていた。
「屋上か…ヒヨに告白したのも、ここだったんだよな」
本を読むヒヨ。
そんなヒヨを見るトウヤ。
何気ない時間が、今は愛おしい。
ヒヨと別れればもう、そんな何気ない日常すらもなくなってしまうのだから。
(ヒヨと屋上で初めて出会った日、俺が屋上に来なければ、俺がヒヨと恋仲になることは永遠になかったかもしれない)
「トウヤ君、来てくれてありがとう」
ヒヨは手を後ろで組み、フェンスに背中をもたれかけさせていた。
「夜の学校って少し不気味だな。もちろん俺はヒヨがいる場所ならどこでも良いんだけど」
そう言ってトウヤは笑う。
努めて明るく振舞おうという意思が見える。
ヒヨが何を言おうとしているのかは、わかっているから。
「トウヤ君。トウヤ君は、私のどんな所が好き?」
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