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ぴょこん、と車掌服を着た青年が、窓から顔を覗かせ、ヒヨに言った。
「これは特別予約便です。青井ヒヨ様、あなたをお迎えに上がりました」
この状況で一つだけ言えるのは、ヒヨをあれに乗せてはいけないということ。
「まだ俗世の人間であるヒヨ様をお迎えに上がったのは、あなた様が死に近い人間だからです。あなたは既に半分死んでいた。だからこそです」
「ヒヨ…」
トウヤは絞り出すように、彼女の名を呟く。
「ヒヨは半死人なんかじゃない。お兄さんとお父さんが死んだのは、ヒヨのせいじゃない。だから、ヒヨが、罪悪感を感じる必要はないし、自分に罰を与える必要もないんだよ」
(だから、行かないでくれ)
「トウヤ君、知ってしまったのね。いいえ、二人とも私のせいで死んだのよ。兄は私を父から庇って死に、そして私が、父を殺した」
ケンタロウの自殺の原因は、我が子を虐待し、そして死なせたことによる罪悪感だった。
睡眠薬を飲み、自殺を遂げようと風呂場に入った父を発見したヒヨは、父親の首を絞めた…。
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