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その後、ヒヨはやっぱり本を読んでいる。
それは長年の習慣だからか、多分トウヤはほんの少し、彼女に近付いたにすぎない。彼女の人生観とか死生観とか、長年根付いたものは中々変わらないだろう。
だけど、彼女は以前より多く笑うようになった。
「クラスの女子と仲良くなれた?」
「うん、それは中々難しいかも。でも文芸部に入ることにしたわ」
「そっか、俺も入ってみようかな」
「トウヤ君が?」
ヒヨは大げさに驚いた表情をする。
「ひっでーなー」
「うそうそ、ごめんなさい。どんな小説を書くつもりなの?」
「うーん、色々試したけど、推理小説が一番しっくり来たから、まずはそこから始めてみようかなと。まだ読む専だけど」
「じゃあ、読みやすくてお勧めの本を紹介するわ」
「頼む。なるべくなら短編がいいな」
「トウヤ君」
ヒヨが改まってトウヤの目を見つめる。
「いつか本当に、私が死ぬことになったら、またあの銀河鉄道が迎えに来るかな」
「来るかもな。でも寂しくない」
「何で?」
トウヤはヒヨの手を握りしめる。
「その時は俺も一緒に行くから」
「……温かい」
トウヤの手の温もりが伝わる。
それは魂の温度。魂なんて、冷たく、寂しいものとばかり思っていた。
これから先、どんなことがあっても、きっといつか、「本当の幸福」を見つけられる。
ヒヨはそう確信したのだった。
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