吸血城の夜

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 城の地下。  窓のない、真っ暗な部屋に、ポッと蝋燭の明りが付く。  「フェル様、マルグリット様、お目覚めの時間です」  執事の服装を着た顔面蒼白の青年が、コンコンと棺桶を叩く。  「んん……もうそんな時間?グレン、私は何時間くらい眠っていたのかしら」  棺桶の蓋がズズッと動いたかと思うと、少しやつれた幼い少女が顏を出した。  「約24時間でございます、マルグリット様」  「そんなに。静かすぎるのも問題だわね。お姉さま、24時間ですって」  マルグリットと呼ばれた少女が語りかけると、ぴったり寄り添っていた隣の棺桶の中から、もう一人の少女が顏を出した。  「ふう……こうも睡眠時間が長いと、体の調子が悪くなるわ」  こちらも少しやつれた顔をしている。  「グレン、あなたの血を少し頂戴」  「フェル様、それは無理でございます。ワタクシには血が通っていませんので」  グレンがそう言うと、フェルはつまらなそうに彼を一瞥する。  「わかっているわ、ただの冗談よ。グレンったら本当に真面目なんだから」  「さあ、お食事にしましょう、お姉さま」  「ええ、グレンに冗談なんか言ってたら、私も喉がからからよ」  そうして二人の姉妹は、仲良さげに連れだって固い石の廊下を歩きだすのだった。
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