吸血城の夜

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 食堂には、でかでかと皿に乗せられた豚、それと赤ワインが用意されていた。  「あら、また豚の血?」  マルグリットが渋い表情をする。  「はい、ブリュージュでは、ここ最近豚が生産過多になっておりまして、安く仕入れられるのでございます」  「そういう問題じゃないわよ。飽きるって言ってるの」  フェルが、マルグリットの気持ちを代弁する。  「はあ、しかし食事など、所詮ただのエネルギー補給に過ぎません。豚の血は栄養豊富ですし、精力も付くと言います」  グレンがそう言うと、吸血鬼姉妹はぱっと顔を見合わせる。  「精力ですってよ、お姉さま」  「いやだわ、グレンったら。本当にデリカシーに欠けるポンコツね」  そう言って二人はクスクスと笑った。
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