吸血城の夜

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 城のテラス席。  二人は月を眺めながらワインを飲んでいた。  真っ赤な月はぽっかりと空に浮かび、二人に笑いかけるように輝いている。  風がかすかにそよぎ、頬を撫でていく。  「今夜は月が綺麗ね、マルグリット」  「ええ、お姉さま。こんな日は、ワインでなく、人間の血が吸いたくなるわ。もう何日人間の血を吸っていないのかしら」  「そうね、グレンがポンコツだから、気をきかせて人間の一人でも攫ってきてくれたらいいのに」  「吸うなら、やっぱり見目麗しく逞しい殿方の血がいいわ」  マルグリットが頬に手を当て、夢想する。 「町に行って人を襲うのは、あまりに野蛮だし、私たちにとっても危険だからやめろとお母様が行っていたしね」  姉妹の母親は、同胞会議とかであちこちの町へ赴いていて、城にはほとんど帰ってこない。  父親のことは、よくわからない。  二人が物心ついた時にはもういなかったし、いないことが普通だと思って育った。  姉妹の傍にいるのは、自動人形のグレンだけである。  いくら見た目が青年とはいえ、所詮人形。  慣れれば、手紙を書く羽ペンと同じ、ただのモノだった。  そうして姉妹が人間の血について熱い思いを馳せている時。  「フェル様、マルグリット様、お客様でございます」  グレンがやって来て、恭しく頭を下げる。  姉妹は再び顔を見合わせた。
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