吸血城の夜

8/15
前へ
/41ページ
次へ
 「さて、それでは何から始めたら良いのかしら?」  マルグリットが首をひねる。  「まず体の自由を奪うことね。食事に薬を混ぜて昏倒させましょう」  「なるほど、いかに相手が人間と言えど、立派な大人の男性。暴れられたら面倒ですものね」    「グレン、何か良い薬は置いていないの?」  「はい、それでは、以前奥様が使用されていた睡眠薬を拝借しましょう」  「お母様が睡眠薬を?初耳だわ」  「奥様は旦那様が恋しかったようでございます」  「なぜ今まで黙っていたの?」  「黙っていた訳ではありません。聞かれなかっただけです」  「……全くポンコツだわ」  「ええ、お姉さま」    姉妹はぶつぶつと文句を言いながら、トマトスープに睡眠薬を混ぜいれる。  「あまり多く入れると、味が変だと気づかれてしまうかしら」  「そうねお姉さま、少しだけにしておきましょう」  楽しそうにはしゃぐ二人の行動を、グレンは感情のない目でじっと眺めていた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加