ヒヨの魂

2/24
前へ
/41ページ
次へ
   春晴れの下。  公園には子供から老人まで、多種多様な人々が思い思いの時間を過ごしていた。    その中には、カップルがかなりいるのだが、朝霧トウヤはそんな人達を見て、自分が勝ち組にいることを実感するのだった。  なぜならトウヤの隣では、トウヤの恋人である所の、青井ヒヨがベンチに腰かけていたからだ。    ヒヨは、わずかに首を傾げ、文庫本に目を落としていた。  端正なるその佇まいは、ヒヨの容姿の愛らしさも相まって、とても絵になる光景だった。  写真に撮り、永久保存しておきたいショットだ。  (よし、撮ろう)  トウヤはスマホをヒヨにかざし、彼女を二次元に収めることに成功する。  「……」  「ああ、俺は、ヒヨと恋仲になれるなんて、なんというリア充なんだ!」  「……」  ヒヨは眉一つ動かさない。  ヒヨの澄んだブルーの瞳が、美しく輝いてトウヤを映す。  トウヤはヒヨのこの目が好きだった。  空の青でも、海の青でもない、うまく言えないが、透明なブルーとでも言うか。  (綺麗だよなあ)  あまり見つめすぎると、ヒヨが煙たがるのだが。  「俺、ヒヨは日本一可愛いと思うな。うん、自信ある」  「…トウヤ君」  ヒヨが重々しくその口を開く。  「何?」  「もう少し静かにして。集中できないわ」  ぴしゃり。  (うん。そう来ると思ってた)
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加