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春晴れの下。
公園には子供から老人まで、多種多様な人々が思い思いの時間を過ごしていた。
その中には、カップルがかなりいるのだが、朝霧トウヤはそんな人達を見て、自分が勝ち組にいることを実感するのだった。
なぜならトウヤの隣では、トウヤの恋人である所の、青井ヒヨがベンチに腰かけていたからだ。
ヒヨは、わずかに首を傾げ、文庫本に目を落としていた。
端正なるその佇まいは、ヒヨの容姿の愛らしさも相まって、とても絵になる光景だった。
写真に撮り、永久保存しておきたいショットだ。
(よし、撮ろう)
トウヤはスマホをヒヨにかざし、彼女を二次元に収めることに成功する。
「……」
「ああ、俺は、ヒヨと恋仲になれるなんて、なんというリア充なんだ!」
「……」
ヒヨは眉一つ動かさない。
ヒヨの澄んだブルーの瞳が、美しく輝いてトウヤを映す。
トウヤはヒヨのこの目が好きだった。
空の青でも、海の青でもない、うまく言えないが、透明なブルーとでも言うか。
(綺麗だよなあ)
あまり見つめすぎると、ヒヨが煙たがるのだが。
「俺、ヒヨは日本一可愛いと思うな。うん、自信ある」
「…トウヤ君」
ヒヨが重々しくその口を開く。
「何?」
「もう少し静かにして。集中できないわ」
ぴしゃり。
(うん。そう来ると思ってた)
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