ヒヨの魂

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 ***  まず、なぜこんな可愛い子が、そこそこの容姿―クラスで10番目くらい?―の俺と恋人になってくれたのか。  それは競争率の問題であった。    ヒヨは可愛いが、周囲からは変な女の子だと思われているのだ。  いつも一人で本を読んでいるし、時々ぼーっとどこか遠くを見つめていることがある。    同じクラスで仲の良い男子グループは、「あいつ可愛いけど、話しかけづらいんだよな。多分付き合っても話合わないし、駄目だわ」    「オレは瑠璃原と付き合いたい。成績悪いし、よく遅刻して来るけど、一緒にいて楽しいと思う。やっぱ恋愛はフィーリングが合わないと」  「いやいや、瑠璃原意外に競争率高いから。何丁度お似合いみたいに言ってんだよ」    「トウヤは、誰気になる?」  「え、俺?俺は篠崎かなぁ…」  嘘だった。ハブられないための常套手段である。    「無難だな。まあ夢見ても裏切られるだけだしな」  仲間たちは、トウヤの答えを聞いて笑った。    トウヤはちらりと席に座るヒヨに視線を向けた。    ヒヨは文庫本に目をやっていたと思うと、本を机に置き、窓の外に視線をやった。  そのまま何をするでもなく、外の景色を見ている。  外に何かあるのか、トウヤは視線を向けるが、そこにはただ、空にふわふわの雲が浮かんでいるだけだった。    「何が見えるんだろう…」  「トウヤ?」  「あ、何でもない。今日の晩飯何かと思ってさ、ボーっとしちゃったよ」  「さっき昼飯食ったばっかじゃん」  また笑い。    トウヤはもう一度ヒヨを見たかったが、仲間たちが教室を出て行くので、遅れないように付いていくしかなかった。
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