12人が本棚に入れています
本棚に追加
***
まず、なぜこんな可愛い子が、そこそこの容姿―クラスで10番目くらい?―の俺と恋人になってくれたのか。
それは競争率の問題であった。
ヒヨは可愛いが、周囲からは変な女の子だと思われているのだ。
いつも一人で本を読んでいるし、時々ぼーっとどこか遠くを見つめていることがある。
同じクラスで仲の良い男子グループは、「あいつ可愛いけど、話しかけづらいんだよな。多分付き合っても話合わないし、駄目だわ」
「オレは瑠璃原と付き合いたい。成績悪いし、よく遅刻して来るけど、一緒にいて楽しいと思う。やっぱ恋愛はフィーリングが合わないと」
「いやいや、瑠璃原意外に競争率高いから。何丁度お似合いみたいに言ってんだよ」
「トウヤは、誰気になる?」
「え、俺?俺は篠崎かなぁ…」
嘘だった。ハブられないための常套手段である。
「無難だな。まあ夢見ても裏切られるだけだしな」
仲間たちは、トウヤの答えを聞いて笑った。
トウヤはちらりと席に座るヒヨに視線を向けた。
ヒヨは文庫本に目をやっていたと思うと、本を机に置き、窓の外に視線をやった。
そのまま何をするでもなく、外の景色を見ている。
外に何かあるのか、トウヤは視線を向けるが、そこにはただ、空にふわふわの雲が浮かんでいるだけだった。
「何が見えるんだろう…」
「トウヤ?」
「あ、何でもない。今日の晩飯何かと思ってさ、ボーっとしちゃったよ」
「さっき昼飯食ったばっかじゃん」
また笑い。
トウヤはもう一度ヒヨを見たかったが、仲間たちが教室を出て行くので、遅れないように付いていくしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!