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その後中々ヒヨに接近するチャンスは訪れなかった。
相変わらずヒヨの評判は、可愛いが無愛想、何考えてるかわからない、さわらぬ神に祟りなし、と言った具合だった。
トウヤの経験では、まず大抵クラスで本を読んでいる人は、煙たがられる。話しかけづらいのもあるけど、きっと本を読んでいる人が、自分より頭が良いように思えてしまうからだろう。自分に理解できないことをしている人間が怖いのだ。
トウヤは、別に本を読んでいるやつがいたって良いと思う。個性だろう。
でも集団生活で個性というものは、出る杭は打たれる、となる。
だから皆自分を偽っていく。
そうして個性をはぎ取っていく。
学校とは、社会とは、そういう場所なんだと思う。
だからトウヤは、少しだけヒヨが眩しく見えた。
彼女に、まだはぎ取られていない個性を感じたのだ。
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