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次に彼女に接近することができたのは、偶然、屋上に行った時だった。
特に予定もなく、家に帰ってもすることがないので、屋上で空でも見ようかと、思った。
(何かヒヨに影響されたかな?)
扉の鍵はボロボロだから、簡単に開くことができる。
しかしその日は既に扉が開いていて、鍵を開ける必要はなかった。
屋上の錆びた鉄扉を開くと、そこは空に面していた。
学校で一番空に近い場所。
解放された気分になる。
「ん?」
見ると、先客が居た。
フェンスに身を寄せ、景色を見ているのは、ヒヨだった。
これはチャンスだ、とトウヤは思った。
トウヤは学校ではヒヨに興味がない振りをしているが、もし実際付き合ってしまえば、彼女がちゃんと人間にも恋愛にも興味がある普通の子だと、説明できるのだ。
そして仲間たちは惜しいことをしたと悔やみ、トウヤの先見の明を認めるだろう。グループ内でも一目目利きとして箔が付くってものだ。
むしろ他の生徒がヒヨを避けている今こそが、最大のチャンスなのだ。
トウヤはポジティブ思考を発揮し、ヒヨに話しかけた。
「青井…さん」
トウヤの呼びかけに、ヒヨがゆっくりと振り返る。
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