112人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「あぁ」
「…なんか不都合あるの?」
ありまくりだ。
「…おおいにある」
「皆にいじられるから、とか?」
「…なんだ、それは」
「えーっと…」
俺の不都合については全く思い当たらないようで、彼女はウンウンと頭を悩ませている。
こいつは一体、何年俺の近くにいるんだろう?
何故こんな簡単なことに気づかないのか、理解不能だ。
言葉足らずな自分を棚上げし、何となくイラつく。
少しは気づけと言わんばかりに、彼女を囲う腕に力を込めた。
「い、斎?」
「大学は高校と違って、出入り自由だ。いつでも来ればいい」
「あ!」
声を聞いて、はっきりとわかった。
完全に抜けてたな。
「俺もあいつらもそのまま上に進学する予定だ。テニスも続けるだろう。お前が打ち合いたいなら相手をしてやる」
「…そっか」
「共学気分も気軽に味わえる」
「…そうだよね」
「あと、苦労せずにここまで来てしまったと思うなら、親に感謝して、精一杯勉強しろ。大学まではエスカレーターでも、その先はそうもいかない。足掻くのは、そこからでもいいんじゃないのか?」
「…」
呆然と俺を見上げ、やがてゆっくりと頷いた。
……やれやれ、納得したか。
俺はホッと一息つき、彼女を解放した。
最初のコメントを投稿しよう!