いつまで経っても雨はやまない

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実際に連絡を取ってみると、彼は驚く程純粋な男だった。人を疑うことをまるで知らない。大学内では、私の良くない噂が飛び交っている。恐らく、同じ高校から上がってきた女があることないこと言いふらしたのだろう。しかし、それに対しても「すずちゃんって、噂だともっと嫌な子かと思ってたけど、話してみると、いい子なんだってわかったよ」なんて言ったりした。 「すず、青銅くんと付き合ってたでしょ? 青銅くん人気あったから、青銅くんのこと好きだった子がここに進学してて、嫉妬からだと思うんだけど、すずのこと悪く広めちゃったの」 「え? そうだったんだ」 「でも、青銅くんは気にするなって優しくしてくれたから」 「そっか。青銅くんとすずちゃんは、別れてもお互いのこと大事にしてるんだね」 西島慧の言葉にはうんざりする。綺麗事が多いというかなんというか……。青銅の方は、悟りを拓いちゃっておかしくなっているから、どうかはわからないけれど、私は自分の利益のためにしか他人を褒めたりしない。それが、わかっていないからアンタは今から私に騙されることになるのよ。 ラインを使って西島慧に神崎凛への情報を送った。 [神崎さんて、高校生の時から男の子がすごく好きで、彼氏がいっぱいいたんだよ。青銅くんと付き合ってたのに、別の彼氏がいたの] [青銅くんは優しいから、凛ちゃんはそんなことしないって信じてないけど、すずは許せないの。好きだった人を苦しめたってこと] 西島慧からの反応を見ていると、彼が本気で神崎凛のことを好きなのが伝わってきた。それ故、私が与えた情報が大きな打撃を与えたようだった。
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