涼菓

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「見て!奉納神楽の狐面!」 「おい勝手に持ち出して叱られるぞ」 「勝手じゃないもん、私今年の主役に決まったの、だから今は私の!」 俺達の地元で三年おきに行われる奉納神楽、その主役の舞姫に選ばれる事は大変名誉な事とされている。 「選ばれなかったら悲惨だったと思わない?」 能天気に笑う紗月の二人の姉は、才色兼備という言葉が似合い過ぎるほど似合う二人で、当然のように舞姫を務めていた。 紗月だけを見れば人柄も容姿も成績も申し分ないのだが、いかんせん比較対象が悪すぎる。 「成功したら私もお姉ちゃん達みたいになれるかな」 こいつの凄いところはどんなに自分を貶められようと、姉達の事を本気で慕っていられる事だと思う。 神楽を成功させた舞姫は高嶺の花になり、おいそれと近付けない空気を感じてしまう。 本人からではなく、周りからだが。 「やるよ」 「え?なんで?」 「餌付け。他の奴に取られる前に」
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