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「――何かな?」
疑問系だったが、答えは明確だった。知人とかじゃなく、深い意味で、恋人なんて行き過ぎた関係でもない。
この世界に溢れているものの名を。僕は言えずに黙り込んだ。
ちーちゃんは、そんな僕に助け舟を出した。
「ねえ、次会った時は、私のこと名前でよんで。そうしたら、こっちも名前で呼んでいい?」
にっこり笑ったちーちゃんの笑顔は太陽みたいだった。
僕はその陽にうぬぼれつつ、こう返した。
「いいよ。ちーちゃんになら許す」
「じゃあ、交渉成立」
ちーちゃんは嬉しそうだった。
「それじゃあ、またね」
ちーちゃんと下足室まで一緒に行って、そのまま別れた。
次の日、ちーちゃんは学校に来なかった。
その次の日も、次も、どんなに待ったって来ない。僕は担任先生に聞きに言ったが、見事にはぐらかされた。
二学期になってもちーちゃんは来なかった。いつのまにか隣のクラスのちーちゃんの机は撤去されていた。
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