至高の逸品

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「ーーあれは、そう。ルーブルを見た後だった。 俺とママンは道に迷い、オレンジみたいな名前の美術館の前をさまよい、ポン=ヌフを渡った。 ああ、綺麗な川だったぜ。 オシャレな絵描きが絵はがきを売っていた。 かなり高額だったが、未来のゴッホの為に、俺は買った」 ちなみにこの絵はがきを俺に土産だとケンゴはくれたが、どう見てもゴッホのヒマワリのポストカードだった。 「恋人とこの橋の上を歩きたいと、願ったぜ」 「母ちゃんと歩いてんじゃねぇか」 「“ママン、そろそろ疲れたね” “そうね息子よ。アラ、あんな所にトレボンなキャフェが見えるわ” “違うよママン、あれはビストロだ” “まあ、では入りましょう”」 とうとうケンゴの話は漫談となっていった。 「その中で俺はギャルソンに言った。 “ランチ、ぷりーず”とね。 俺のママンは“サラダが食べたいワ”と言った。だから俺は言ったね。“ヘイ、サラダ、ぷりーず”と!」 ケンゴの酔いしれる顔が腹立たしい。 「ヘイタケシ。その時、俺は雷に撃たれたような料理に出会った」 「なに。早く言え」 苛立つ俺に、ケンゴは人差し指を左右に振ってチッチッチ、と口を鳴らした。 もうこの時点でこいつの補習プリントは真っ白で、 補習の追試は決定だ。
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