5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ーーあれは、そう。ルーブルを見た後だった。
俺とママンは道に迷い、オレンジみたいな名前の美術館の前をさまよい、ポン=ヌフを渡った。
ああ、綺麗な川だったぜ。
オシャレな絵描きが絵はがきを売っていた。
かなり高額だったが、未来のゴッホの為に、俺は買った」
ちなみにこの絵はがきを俺に土産だとケンゴはくれたが、どう見てもゴッホのヒマワリのポストカードだった。
「恋人とこの橋の上を歩きたいと、願ったぜ」
「母ちゃんと歩いてんじゃねぇか」
「“ママン、そろそろ疲れたね”
“そうね息子よ。アラ、あんな所にトレボンなキャフェが見えるわ”
“違うよママン、あれはビストロだ”
“まあ、では入りましょう”」
とうとうケンゴの話は漫談となっていった。
「その中で俺はギャルソンに言った。
“ランチ、ぷりーず”とね。
俺のママンは“サラダが食べたいワ”と言った。だから俺は言ったね。“ヘイ、サラダ、ぷりーず”と!」
ケンゴの酔いしれる顔が腹立たしい。
「ヘイタケシ。その時、俺は雷に撃たれたような料理に出会った」
「なに。早く言え」
苛立つ俺に、ケンゴは人差し指を左右に振ってチッチッチ、と口を鳴らした。
もうこの時点でこいつの補習プリントは真っ白で、
補習の追試は決定だ。
最初のコメントを投稿しよう!