告白、相対、新しい日常

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「はぁ、はぁ……」 「……」 「やっと、見つけた」  誰もいなくなった屋上に小さな人影をひとつ見つけ近付いた。夕陽は沈みかけぼんやりと浮かぶその姿は確かに探し人だった。 「……みつか……た」 「すみません、ここに思い出があったこと覚えていませんでした。僕は失格ですね」 「ううん……なんどか……買い物来たけど……それ、だけ」 「え?」 「……ルール違反……失格は鈴なの」 「それじゃあどうしてここに来たんですか?」 「……見つけて……ほしくない、から」 「見つけてほしくない?それってつまり、僕のこと……」 「違うよ……鈴よりも……幸せに……なって欲しいひと……いるから」 「もしかして、姉さん達のことですか?」  その問いに鈴はゆっくりと頷いた。 「今まで……たくさん……がんばったから……これからはたくさん……楽しい思い……してほしい」 「鈴、あとでゴツン一回です」 「え?」 「きっとそれは優しさとかじゃなくてとても失礼なことだと思います」 「……」 「姉さん達はそんな風に想いを譲られても納得しませんし、喜ばないと思います。みんなが同時に告白するようにしたのは年齢とか一緒にいた期間とか姉妹っていうのを抜きにして、ひとりの女性として公平に見て欲しいから一斉に告白してこういう形の答えの出し方を求めて来たんだと思います。そうやってひとりひとりが真剣に取り組んでる中で想いだけを告げて中途半端な優しさを掛けることは最大の侮辱ではないんですか?」 「鈴……そんなつもりは……」 「わかってます。でも、そう思われるかもしれないんです。誰が選ばれても恨みっこ無しってことはそれだけみんな真剣なんです」 「……」 「もう時間がありません、ハッキリさせましょう。僕の想いはここに来た時点で決まってます。鈴はどうですか?」
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