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「……すずは……すずは……」
ルールを破った私を見つけてくれて、幻滅することなく優しく諭してくれた。きっとこの先もどれだけ間違えても正しい道に戻してくれる。頼りになるそんな人だから……
「……そばに……いたい……だって……鈴……ユウ兄のこと……大好きだから!」
精一杯に紡がれた言葉が胸に響いた。一生懸命な表情、仕草、声。どれもが好きで気が付けば力強く抱きしめていた。
「良かったです。鈴が同じ気持ちで」
「ユウ兄……からも……聞きたい」
「言わずもがな。なんてずるいですよね」
腕の中で小さく頷いたのを確認し、大きく息を吸い込んだ。
「天才とか秀才とかそんなつまらない所に惹かれた訳ではありません。寡黙だけどいつも一生懸命に伝えてくれる姿とか、周りに気を配れる優しさとか、純粋で好奇心旺盛な所とかそんな鈴が僕は大好きです。兄、妹からは変わってしまいますがこれからも一緒にいてくれますか?」
「……うん……ずっと……いっしょ」
「はい。ずーっと一緒です」
辺りが暗くなってもその涙混じりの笑顔だけははっきりと分かり、込み上げてきた愛しさそのままに満足するまで抱き合った。
「そろそろ帰りましょうか」
「……名残……おしいけど」
「じゃあ手を繋いで帰りましょう。そうすればまだまだ繋がったままです」
「……ユウ兄……頭いい」
「もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
「すき……えへへ」
「僕も大好きです」
向けられた眼差しに真っ直ぐの好意を返しデパートを後にした。
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