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「もう……ついた」
「あれ、不満ですか?」
「楽しい……時間……すぐおわる」
「それはまた楽しい時間があるからですよ。楽しい時間がずーっと続くと楽しいってことを忘れてしまって普通になってしまうんです。そうなると楽しいがわからなくなってしまうので楽しいが終わってまた新しい楽しいに出会うんです」
「??……楽しい……ずっと続いた……方がいい」
「ははは、天才って呼ばれる鈴でもわからないんですね。もう少し大人になればわかりますよ」
「零姉も……それ……ばっかり」
「急がなくていいんです。色んなものを見て、感じて大人になってください、そうすればきっとわかる日がきます」
「……むぅ」
「への字口の鈴かーわいいっ!」
「……くるし」
こうして僕達は関係をひとつ進めて恋人同士になった。きっとこれから太陽さえもうだるような二人の熱い夏が始まるんだと思う。
「いやーまさかまさか鈴ちゃんとはねー」
「お姉ちゃん少しだけ心配だよ」
「鈴、怖いと思ったら110番よ」
この失礼な言葉が飛び交っているのは告白が成功した翌日の朝食の時間。もちろん僕も鈴も美味しい朝食をいただいています。それなのに遠慮も優しさもなくひどい言葉をぶつけられています。
「ははは、みんながなにを心配してるか理解が出来ませんね。僕が鈴を泣かせるなんてありえません」
「その自信が怖いのよ、うっかりやり過ぎないようにしなさいよ」
「肝に命じておきます」
「ところでお兄ちゃんひとつ聞きたいことがあるんだけど」
「なんでも聞いてください」
「鈴ちゃんのどこが好きなの?」
「どこってそんなの全部です」
「そんな適当な言葉で私達が納得すると思ってるの?大事な妹を預けるわけだから知りたいの」
大きく開かれたふたつの瞳が真剣にこちらを見つめてる。どうやらしっかりと答える必要があるようです。
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