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必死な鳴き音にちょっぴり怖くなった私は、大きめの声をあげた。
「ばーちゃーん!蝉が松んとこにいるー」
私がじーちゃんの大きい松を指さすと、薄紫色の茄子の花に何かを吹き付けていたばーちゃんが、頬被りした顔でこちらを向いた。
「捕まえるんか?」
「ううん、見てるだけ……」
本当は虫が苦手だった。もちろん蝉も例外ではない。好奇心がある割りに案外怖がりな子供だった。
「ハハハハ、さちは蝉も怖いんか。宿題は終わったんか?」
「今色塗りしてたとこー!あと少しで終わるよー」
「そうか、ばーもトーン付けしたら一服するから居間に居れよ。あっちーなって来たからな」
「うん、もうちょっとしたら行くー」
私とばーちゃんは縁側と畑から交互に声をかけあった。大きく手を振ると、ばーちゃんはキラキラ星のお遊戯みたいに左手首をヒラヒラさせた。
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