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心臓がドキドキして呼吸も苦しい。一年生の私の体力はそんなになかったようで、おばちゃん達の横を過ぎてから速度は落ち、終いにはとぼとぼとした足どりになる。
時折吹く風が汗と体温を浚うと、額がひんやりして気持ち良い。首から下げたガードは裏返って、牛乳の写真が喉の渇きを思い出させた。
「ワンッワンッワンッ」
「これっ、ゲン!」
突然聞こえた声に振り返ると、おばちゃんはさっきと同じ場所で手を振っていた。ゲンは、ピンと立てた尻尾をブンブンさせて、先程の様子は微塵もない。
「さっちゃーん!ばーちゃん、ちゃんと待ってるから転ばんようになー!おばちゃんも後で仏壇にお参り行くからなー」
おばちゃんの大声に反応した私も、合わせるように大きく手を振りながら叫んでいた。
「うん!おばちゃんバイバーイ!ゲン、バイバーイ!」
二人は緩い右カーブを曲がって行く。その先の神社で折り返して戻って来るんだろう。
私は何故かすっきりした気分になってまた走りだした。
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