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「ばーちゃん!」
「さち、走って来たんか?今からばーのとっておき、切るぞ」
「うん!」
普段から少しだけ前屈みのばーちゃんは、日焼けした顔いっぱいに皺を作って笑った。
まな板の上では横たわるお目当ての球体。さっきとは違うドキドキがしてきた。
その日は1年前に亡くなったじーちゃんの祥月命日だった。共働きの両親に代わって面倒をみてくれた祖父母。
じーちゃんが息を引き取った日、私は誰が宥めても泣き止まなかった。その理由は自分でもよくわからない。そんな時ばーちゃんが私に言った。
『さち、じーちゃんは天国の畑でもスイカ作るって張りきってる。ばーはこっちの畑でさちにうんまいスイカ作るからな』
ばーちゃんはそう言って赤くなった目で私の頭を撫でた。私は何故か黙ってコクンと頷いた。
『来年はばーが作ったスイカをじーの仏壇にお供えして……それからばーと一緒に食おうな、さち』
自分でも不思議だった。今の今まで大声で泣いていた私が、ばーちゃんの話を聞いた途端ピタリと泣き止んだ事に。深い深呼吸に変わった事に。
『……うん』
私は、泣き腫らした顔と掠れた声で返事をした。
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