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ばーちゃんが丹精込めたスイカは淡い緑色にひょろひょろの黒線が何本も付いている。球体は少し小ぶりだったけど、大きさはどうでも良かった。スイカのお尻に包丁の先端を当てると、"バリッ"と音が鳴り、私の肩はピクッとなった。
「ハハハ、びっくりしたか?活きがいい証拠だ、さち」
ばーちゃんが皺いっぱいの笑顔のまま包丁を下ろすと、ザクッ、トンッ、と鳴る。冬によく耳にする大根を切る音に少し似ていると思った。
切れ味の良い菜っ切り包丁で割られたスイカは、真っ赤で艶々に光っている。薄い皮を伝ってまな板には透明な赤色が流れ、忽ち青臭くて甘い匂いが充満した。そう、この匂いだ。一年ぶりのスイカに私は興奮した。
「わぁっ!」
「ほぉー、いい色だ。匂いもいいし、まずまずだ」
ばーちゃんは自慢気にニッコリ笑った。匂いだけで甘いかどうか解るっていうばーちゃんは、本当に凄いと思う。私にはさっぱりわからない。でも、美味しいスイカが食べられたらそれでいい。
私はいつからスイカが好きになったんだろう。初めてスイカを見たのは多分二歳くらい。いつの間にか『すいか』という言葉を覚えて、いつの間にか大好きになっていた。
だから夏という季節も大好きだ。スイカが食べられる夏が一年のうちで一番待ち遠しい季節だった。
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