ゆかりの憂鬱!

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ゆかりはそのメールをじっと見つめていた。 確かに子供も夫も大切だ。 しかし、夫は仕事といいながら年中飲み歩いている。 おまけに少し前にはキャバレーのオンナと一緒に撮った写真を送ってきた。 付き合いだといっていたが。その顔は大口あけて笑っていた。 そんな楽しい付き合いならば私だってやりたい。 これまで心の中に鬱積していた不満が次々と頭に浮かんできた。 ゆかりは本棚から昔のアルバムを取り出した。 そこには理恵と二人で旅行を楽しんだ写真がある。 スレンダーで流行のミニスカートがよく似合い肌も光り輝いている。 街を歩いていても男達によく声を掛けられた。 そして大学のスキー部に入り青慶大学との合同合宿では誰よりも男たちの気を引いていた。 その中に夫の川口隆志もいた。 隆志は同学年だったが、小さい頃からスキーをやっていたのでうまかった。 そして格好良かった。 彼の気を引こうとわざと目の前で転んだ女性もいる。 そして理恵も狙っていた。 が、隆志は自分を選んだ。 そのときは“勝った”というより、“当然よ”と思った。 隆志に教えてもらったウェーデルンで真っ白な雪の上に二人でシュプールを みんなの前でこれ見よがしに描いたやった。 合宿の後の打ち上げでもスキー場にあるクラブで一緒に踊った。 全てが夢のようだった。 そして、みんなに歓迎されて大手広告代理店に入った隆志と結婚式をあげた。 さすがに大手広告代理店だけのことはあり有名なタレントもやって来た。 ・・・多分仕事がらみだろうけれど。 理恵は本当に羨ましそうな目でゆかりを見ていた。 新婚旅行はヨーロッパ10日間の旅。 全てが夢のようだった。 しかし今は毎日が子育てと夫のご飯の用意と掃除に洗濯。 自分の時間は全くない。 おそらくあと数年で、これに自分の親と義理の親の介護が加わる。 このまま朽ち果てていいのだろうか。 ゆかりの心の中に湧き出した不満という種が、少しずつプチプチと音をたてながら 醗酵しだした。 そうはいっても、時間もなければ先立つものもない。 ゆかりはぐっと堪えて「今回は都合がつかない」とメールを送った。
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