ゆかりの憂鬱!

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すると、理恵からまたメールが来た。 ―久しぶりで会わないー ゆかりはむしょうに理恵に会いたくなった。 愚痴を聞いてもらいたいというのではないけれど、家に閉じこもり亭主と子供の世話に 追われている自分がこのままで良いのか ・・・・・・確認したかった。 学生時代一緒にぶらついた渋谷のデパートで待ち合わせをした。 理恵はまだ独身を謳歌しているらしくミニのワンピースをヒラヒラさせてやってきた。 近づくと強い香水の匂いが鼻をついた。 (相変わらず濃い化粧をしている。いい歳をして) 心の中で毒づいた。 久しぶりに来た化粧品売り場。 以前は殆ど常連だった。 理恵が美容部員につかまった。 ものほしそうな顔をしていたからだろう。 相変わらず化粧品に目がないのだ。 理恵はうれしそうに相手をしている。 ゆかりはため息をついた。 既に30分以上過ぎている。 ゆかりは理恵の背中を軽くつっついた。 「そろそろいかない」 そのとき美容部員がゆかりに気がついたようだ。 「こちらの化粧品はお母様のような年代の方にも効果があります」 美容部員は満面の笑みを浮かべ化粧品を手に取ってゆかりの目の前にかざした。 ゆかりの顔は強張った。 すぐに知らんふりをして、その場から離れた。 理恵は「気にしない、気にしない。ゆかりは結婚して落ち着いているからそう見えるのよ」 と笑っていたが、その目には優越感が溢れていた。 学生時代は自分の方がずっときれいだったのに。 (子持ちの主婦なのだから・・・)と、心の中で言い訳をした。 ゆかりは家に帰って鏡をみた。 見慣れた顔だが、少し頬がたるんでほうれい線が出ている。シワも増えたかもしれない。 よく見ると小さなシミもある。化粧で誤魔化していたが肌も荒れている。 ゆかりはため息をついた。 「お母様のような年代の方」といった美容部員の声が胸に突き刺さったまま張り付いている。 その夜、理恵から「今日はご苦労様。また遊びに行こうネ。楽しかったよー」と書いた メールが送られてきた。
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