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私の嫌いなものは『モモ』だ。
昔から香り強いあいつが嫌いでたまらなかった。その果実の甘さがどうとかは知らない。鼻が人一倍聞く私にとってあれを食べることは拷問でしかなかった。人参やピーマンも嫌いだったけれども徐々に食べれるようになり小学校を卒業する頃には苦手な食べ物は無くなっていた。それ以外。
好きな果物はりんご。爽やかで綺麗なそれが世界で一番大好きだ。赤色も好きだ。けれども、青色も好きだ。鮮やかな色の世界が好きだ。他にも好きなモノを上げるとすれば、赤鉛筆、ハサミ、セロテープ、定規、三角定規も。
後、家族以外の人間ならサヤカちゃんが大好き。サヤカちゃんは小学校一年生の時から仲が良い。私に出来たたった一人の友達。私の大切にするべき友達だった。
――小学校入学と共に引っ越してきた私には幼なじみと呼ばれる存在が居なかった。
仲良くする人間が一人の居なかった。日常の会話ができるような人間が一人も居なかったというしかない。学校までの登校も下校も、横断歩道の人混みも、教室の喧騒も私に意地悪だった。誰も友達になんかなってくれなかった。後、近所付き合いもうまく出来なかったから余計孤独になった。
――私が越してきたマンションには変なしきたりがあった。
『よそ者は無視しよう』
そのマンションに幼稚園いや生まれた時からいる子供ばかりがいた。だからその子らだけが重宝されるシステムだった。これのせいで私は誰とも口を聞いてもらえなかった。けれども、子供らは私に話しかけてくるのだ。嫌みごとを。
一年生だけでなく、まさかの4、5歳上のお姉さんにも暴言を吐かれたことだけは覚えている。イケずなお姉さんは難しい言葉で並べ立てて、終いにはアンタは要らない子と罵ってきた。
幼かった私には何もわからなかった。
――これは『遊び』なのか、それとも『別の何か』なのか。
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