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「あぶり出してあげようと思ってたのに。いいわ、手間が省けたわ」
マリウスと泉、そして少女が相対する。少女は泉の方へと視線をやり、ふふふと笑みをこぼした。
「そこの"黒い狗"に邪魔されたけど、まあいいわ。玩具が増えただけだもの」
妖艶に笑いながら刃物をぎらつかせる。その見た目と相反する表情と仕草は背筋を凍らせるのに十分だろう。
警戒する泉を後ろへと押しやり、マリウスが一歩一歩と、少女の前へ歩み寄る。
「ねえ、おねえさん。ぼく、大事なことを聞き忘れたよ
おねえさん、お名前は?」
少女は勿論、泉も、マリウスの言葉に呆気にとられる。あまりにもこの場に似つかわしくない問いかけだったから。
少しの間ぱちぱちと大きな目を瞬きした後、少女は笑った。嘲笑うように高く声が響く。
「何を、言ってるのかしら?名前なんて無いわ。被検体ネームならあったけれど、失敗作だった頃のものだもの。捨てたわ
ああ、でもそうね、お前をここで殺せば私は"マリウス"になるわね?お前よりずーっと完璧なマリウスになれるわ?どう、素敵だと思わない?」
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