―白狗の過去―

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「―ッ!?」 気がついた瞬間、武器を身構え、素早く振り向く。 そこで再び驚くことになる。 純白の髪、鮮血のような赤い瞳を持った少年とも少女とも取れる自分と同じくらいの背丈の子供が立っていた。 そして、その子供はどこか自分の顔立ちにそっくりだった。 しかし、右目に血の滲んだ包帯を巻いており、右手には肉切り包丁が握られており、血が滴っていた。 「ぼ、…く…?」 その言葉を呟いた瞬間、目の前の自分が狂気じみた歪な笑みを作る。 顔の造形が自分とそっくりだから、その笑いに恐怖しか感じない。 ふふふ、と笑うその声は、少女のように高く、この場に似つかわしくないほど透き通っていた。 「そう、"ぼく"。お前は、"わたし"なのよ。 あぁ、会いたかったわ。マリウス。 …わたしの弟、そして、わたしの一部」 目の前にいる自分にそっくりな彼女は、そう言ってみせた。
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