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某日、猟犬リーダー・火澄の部屋にて。
「お願いです、火澄さん。マリウスさんを、今回の任務から外して貰えませんか」
いつになく切迫した顔で火澄に詰め寄る泉。少し驚いたようだったが、頭を掻きながら、火澄は泉へ向き直る。
「理由は?」
「今回ばかりは、ダメなんです。いえ、ダメだということがたった今分かったんです」
一体どういうことだ、と聞く前に泉は火澄に書類を渡す。
書類と泉を交互に見やった後、何も言わずに書類をめくる。読み終えた後、少しため息交じりに泉に向かって話しかけ始める。
「泉、気持ちは分かった。だがな、マリウスは若いとは言え即戦力だ。…今回の件についても前線に置かなくては要らない死者が出る可能性がある」
「ですが!」
「泉」
窘めるような、しかし粛正するかのような声にかき消され、
「どう受け止めるかを決めるのはマリウス自身だ。…お前が決めることじゃない」
そう言われ、泉は何も言えなくなってしまった。
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