十二夜

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俺がハンカチを拾ったのを見て、ミハイさんが狼狽して俺の手からハンカチを奪い取った。 「ならんぞ、泉実!おまえの手が汚れる!」 地面に投げ捨ててハンカチを汚したのはおまえだ、吸血鬼。 「私と揃いのものがほしいのなら、一言言ってくれればよいのだ。うむ、明日にでも1ダースほど届けさせよう。」 いらん。 心の底からいらん。 「結構です。お気持ちだけありがたく受け取っておきます。」 「そのように慎ましやかにしなくても!」 本気でいらん。 「早く中に入りなさいよねー。邪魔だわ!」 「そんな布っ切れ、泉実さんはいらないってさー。やーい。」 「やかましい!野良どもが!」 店内に入る前に、言い争うお客さんたち。 大国さんが来る前から、これ。 仲がいいのか悪いのか、ちっともわからない。 とにかく、外で騒ぐな、近所迷惑。 「皆さん、店内にどうぞ。暖簾掛けましたから開店です。」 そう声を掛けたら、最初に誰が入るかで揉める。 今夜のお客さんたち、いつも以上に好戦的な気がするぞ。
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