三夜

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困ったときはお互い様ーーーそこは、両親がいながら祖母ちゃんに育てられた俺には、当たり前の感覚だ。 質屋をしていた、今は亡き祖母ちゃんは、利用したことのない人たちからは「金貸し婆あ」なんぞと陰口を叩かれることもあったし、借りた金を返せなくて質草を取り戻せない人からは「金の亡者」なんぞと呼ばれることもあったけれど。 一度でも利用してきちんとお金を返せた人からは、非常にありがたがられていたし、中にはそのまま客と質屋という関係ではなく、困っているときに助けてくれた恩人としてずっと感謝されていたりもした。 祖母ちゃんは、本当に困っている人で誠実な人にはそれなりに都合をつけてやっていたから。 なので、祖母ちゃんが亡くなった今でも、祖母ちゃんの家に住み祖母ちゃんの店を居酒屋にして開業した俺によくしてくれる人は多い。
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