三夜

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「ああ、えーと、ちょうど付きだしを作ったところですし、ご飯が炊けているのでお茶漬けでよければすぐに。」 「すいません、それと、その、ビー・・・」 「ビー・・・?」 「・・・水をもう1杯。」 今、言い掛けたのはビールか?ビールなのか? まあいい、喉が乾いているってことでスルーしておこう。 俺が2杯目の水を注ぐと、田貫さんがぽつりぽつりと話し始めた。 田舎から出てきて、こちらで会社勤めをして、結婚したところから始まり。 ローンを組んで自宅を購入、存命だった母親を呼び寄せたところ。 妻の浮気が発覚、離婚調停の最中に通勤途中の電車で痴漢容疑を掛けられ(これは冤罪だと言い張る)、業績悪化してきた会社からリストラされ、母親はガンで入院。 俺が少しでも詳しく聞こうとすると、そこに被せるかのように別の不運な話をしてくる。 怒濤のような不運の連続の告白なんだが・・・本当なんだろうか。
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