居酒屋まるの一夜物語4

一夜

まあ、ヤタはヤタなりに、俺というより主人であるタカさんに忠実であろうとしているんだし、あとで少しやってもいいか。

そう思いながら店の中に戻り、カウンターの中の厨房に一歩足を踏み入れると同時に。

「ぎゃあ！毎回その顔、見飽きたぞ！」

ヤタ・・・たとえ常連さんにでも、そんなことを言ったらダメだろう。

客商売なのに・・・

「貴様ごときに言われる筋合いはない。いい加減、駄犬の餌にでもなってしまえ。」

そして、神様の遣いにも遠慮のないこの言い方。

「いらっしゃい、ミハイさん。」

暖簾を潜り、開けた戸から入ってくる最初のお客さんに声をかける。

「うむ。今日も可憐だな、泉実。」

おそらく日本語を間違って覚えているこの人は、常連中の常連、トップオブ常連のミハイさんだ。

この店に来るようになって結構経つのに、正しく適切な日本語、いつ覚えるつもりだ。