23470人が本棚に入れています
本棚に追加
/1240ページ
ミハイさんの席は、いつもカウンター席の一番奥。
そこが定位置だ。
酒や料理の好みは、何も聞かない。
何故なら、吸血鬼であるこの人の本当の好みは人間の血なんだろうし、ここではそんなもの出せるはずもないから、ここで飲んでいってくれるのは、いつもフルボディの赤ワイン。
俺は、ミハイさんの前にグラスを置き、ワインのボトルを用意した。
「今夜はオーストラリアのものなんですが。」
「かまわん。おまえが勧めてくるものに、はずれはない。」
そんなことは、ないと思う。
俺よりずっとミハイさんの方が、ワインの造詣には詳しいんだから。
来店時から数ヵ月は、まだ俺の知識がなさすぎて、ずいぶん勉強させてもらったけれど、最近はほとんど文句を言われない。
そんなミハイさんだが、何故か日本のワインは飲んでくれない。
こだわりがあるのか、日本製をはなっからバカにして相手にもしていないのか、そこのところは聞いたことがないから分からないけれど。
最初のコメントを投稿しよう!