一夜

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ミハイさんの席は、いつもカウンター席の一番奥。 そこが定位置だ。 酒や料理の好みは、何も聞かない。 何故なら、吸血鬼であるこの人の本当の好みは人間の血なんだろうし、ここではそんなもの出せるはずもないから、ここで飲んでいってくれるのは、いつもフルボディの赤ワイン。 俺は、ミハイさんの前にグラスを置き、ワインのボトルを用意した。 「今夜はオーストラリアのものなんですが。」 「かまわん。おまえが勧めてくるものに、はずれはない。」 そんなことは、ないと思う。 俺よりずっとミハイさんの方が、ワインの造詣には詳しいんだから。 来店時から数ヵ月は、まだ俺の知識がなさすぎて、ずいぶん勉強させてもらったけれど、最近はほとんど文句を言われない。 そんなミハイさんだが、何故か日本のワインは飲んでくれない。 こだわりがあるのか、日本製をはなっからバカにして相手にもしていないのか、そこのところは聞いたことがないから分からないけれど。
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