一夜

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そうこうしていると、外からまたしてもヤタの声が。 人間のお客さん相手なら、「ぎゃあ」としか無かないが、人間じゃないとなるとヤタは結構毒舌家だ。 問題は、言っていい相手かどうかをちょくちょく見誤るというところだろうか。 「ぎゃあ!ぎゃあ!猫が来た、猫だ!亭主と息子はどうした、ついに捨てたか、ぎゃあ!」 ああ、珠美さんだな。 そして、どうしてこう珠美さんの地雷を踏み抜くようなことを言うんだ、ヤタ。 「余計なお世話言ってくれてんじゃないわよ、ヘボカラス。あんた、その羽むしられたいの!?」 若干低めの声のトーンに、もしかしたら珠美さんの本気か殺気を感じたのかもしれない。 ヤタが沈黙し、戸がからからと開いた。 「いらっしゃい、珠美さん。」 「はーい、泉実ちゃん!元気してたー?」 店に入ってきた珠美さんの機嫌は、もう直っているみたいだ。 猫又の珠美さん、気持ちの切り替えも早く、これが猫の目みたいにくるくる変わるっていうんだろうか。
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