一夜

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「亭主は実家に返したのか。」 珠美さんが一人で来店すると、必ずといっていいほど、ミハイさんも尋ねる。 もちろん、ここにもう一人の常連である木戸がいれば、さらにストレートに・・・ 「ぎゃあ!犬っころが来たぞ!ぎゃあ!」 「うるさいなー、ハゲガラス。泉実さんに頼んで、焼き鳥にしてもらうぞ。」 ほら、来た。 木戸だ。 戸を開けて、店内をさっと見て、俺が挨拶する間もなく。 「いらっしゃ「あれー、珠美さん。どしたの?夫婦喧嘩?」」 「なんで彼女にふられそうなあんたにそんなこと言われないといけないのよ!和佐は会社の飲み会よ!!」 和佐は、珠美さんのご主人の相原さんの名前。 俺の営業マン時代の取引先の社長さんで、この店で再会して、さらに珠美さんとはちょっとした縁があって・・・ 猫又だってずいぶん早いうちから知っていたのに、夫婦になってしまった奇特な人だ。
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