居酒屋まるの一夜物語4

開店

常連客その１。

オズワルド・ミハイ。

出身は東欧らしいが、表向きは米国の投資家。

年齢は600歳を越える。

人間ではない。

吸血鬼だ。

銀の髪に真紅の瞳を持ち、外見は40歳前後でその美貌は周囲の目を引く。

常にブランド物のスーツに黒いコートを身に纏うこの吸血鬼は、一族の次期後継者であり継承権1位を誇る実力の持ち主。

にもかかわらず。

血かフルボディの赤ワインしか飲めないくせに、居酒屋にほぼ毎晩通っては閉店時刻まで居座るこの吸血鬼は。

何故か店主に惚れ込み、再三求婚しては断られ続けている。

しかし、それで諦めたことはない残念な根性の持ち主ではあるが。

さらに、思考もかなり人間離れして残念の極みにあるのだが、本人はまったく気づいていないし気にもとめていない。