二夜

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「貴様の仕事が大したことないのは、周知の事実だろうが。」 カウンターの奥で、面白くなさそうにミハイさんがワインを喉に流し込んだ。 木戸は、ぎろっとミハイさんを睨むが、もちろんなんの効果もない。 「木戸さんは、もう見習いなんかじゃなく、一人前の大工さんじゃありませんか。」 出会ったときはまだ見習いだった木戸も、今じゃあ棟梁に認められていっぱしの大工。 の、はずだ。 「けど、相変わらず俺は一番の下っぱでさあ。」 どうやら、木戸が棟梁のところに来てから、新しい若手はまだ雇っていないらしい。 てことは、一人前の大工になったということだが、仕事場ではまだまだひよっこ扱いされることも多いということなんだろうなあ。 「丁寧にやんなきゃ棟梁に怒られるし、それ守ってるとのろまってからかわれるしさあ!」 少なくとも、細かい仕事向きではない。
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