二夜

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「棟梁じゃないんでしょう?木戸さんにそんなことを言ってくるのは。」 「ん・・・俺の兄弟子。てか、棟梁以外はみんな兄弟子みたいなもんなんだけどさ。」 不貞腐れつつも、言葉に出して少しはすっきりしたのか、木戸はようやく豚の角煮を箸で突き刺して、一切れまるごと口の中に放り込んだ。 同僚との衝突は、どんな職場でもあるから、仕方がないといえば仕方ないんだが。 俺は、自分が営業マンだったころのことを思い出した。 自分で居酒屋をやりたいから、その資金を貯めるために就職。 大手文具関連の会社で営業マンになり、それなりの成績を挙げた。 まあ・・・トップな。 でもって、開店資金節約のために、お得意様ならともかく同僚に誘われても滅多に飲みにいかずに付き合い悪いし、苦労して契約とってきてもその苦労が表情に出ていないらしく楽に仕事をしていると思われることが多くて。 妬まれたし嫌がらせもされた・・・気にも止めなかったがな。
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