二夜

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買い出しかい、と俺の手のかごを覗き込んでくる。 肉の包みを見て、棟梁はげらげら笑った。 「相変わらず、あのバカは店に通ってんのかい。」 バカというのは、もちろん木戸のことだ。 「夕べも店で飲んでいかれましたよ。」 荒れていましたが、と言いたくなるのを堪える。 仕事場のことに、俺が首を突っ込むのはよくない。 俺が個人的に棟梁と知り合いだからって、木戸のためだけに便宜を図ってもらうようなことをしたら、後々木戸にもよくない気がする。 そう思って、続きそうになった言葉を飲み込んだ。 だが、俺のそんな浅はかな様子は、棟梁にはお見通しらしく。 「ははーん。あのバカ、ぼーずの店で管巻いてやがったか。ったく、どうしようもねえなあ。」 ずばりと言い当てられてしまった。
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