二夜

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本当なら、朝のうちに弁当を木戸に持たせるって手もあるんだろうが。 「あの、かすみさんがわざわざ届けに来るのは・・・」 「知ってらぁ。あの嬢ちゃんが自分で頭を下げたからな。」 「えっ!」 かすみさんが!? 「ありゃあ、弁当届けに来るようになってから、何回目だったかな。俺の方から、わざわざこんなとこまで来んのは大変だろうって声を掛けたら、実は・・・てな具合で打ち明けたんだよ。」 自分が高校を休学して引きこもっていること、いじめにあっていたこと、医者から少しずつ外出するように勧められたこと、そして弁当を作って届けることで慣らしていっているのだということ。 それを、棟梁に話したというが。 周りには他の大工たちもいて、しーんとなって聞いていたそうな。 かすみさん、自分から打ち明けるなんて勇気がいったろうに。
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