二夜

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「こっちは、弟弟子んとこにやるわけだから、しっかりしたやつをやらねえとって思ったんだが。そいつは、木戸が嫌がって我が儘ぬかしてやがるから、自分にお鉢が回ってきやがったと思ってる節があんだなあ、これが。」 そういえば、前にもあったなあ。 棟梁が木戸にしばらくよそで修行してこいと送り出そうとして、木戸がそれを嫌がって。 大喧嘩になって、棟梁が木戸を見習いに落とすといい、木戸もそれでいいと啖呵を切り。 仇敵であるミハイさんですら、呆れたり頭を痛めたりした・・・もしかして、またごねたのか、木戸。 「ああ、誤解すんな。今回は、あのバカには最初っから声をかけちゃあいねえよ。仕事がのろいのは本当のことだからな。まだまだあんなひよっこ、修行ならともかく、一人前だと太鼓判押して送り出すってぇわけにはいかねえや。」 力仕事は得意だってのに、細けぇ仕事はなかなか覚えやがらねえと、棟梁はカラカラ笑った。
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