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「ま、あんまし目に余るようなら、俺がどうにかすっから、ぼーずは聞かなかったことにしといてくれや。酒の1、2杯でも余計に注いでやって憂さ晴らしさせてやんな。そいつぁ、今月中にいっちまうからよ。」
「はい。ありがとうございます。」
俺が聞きたいだろうと思って、わざわざ話してくれた棟梁。
俺を安心させるために。
木戸の大バカものめ、こんなに棟梁に可愛がって目をかけてもらっておいて。
かすみさんのことだって、番(つがい)だのなんのと言う前にもっと気を使ってやれ。
「そういえば、棟梁、今日は商店街に何か?」
別れ際になって、俺はふと不思議に思って尋ねた。
棟梁のところは昔かたぎで家のことは全部奥さんに任せているから、商店街で買い物をするのは煙管に使う刻み煙草の葉を買うくらいのはずだ。
それだって、奥さんに「いつものやつ」って頼んだり、木戸たち若手にお駄賃つけて買いに行かせているはず。
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