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そして、夜。
「あー、もー!!なんで俺ばっかり言われなきゃいけないんだよ!!」
やはり、木戸の機嫌はよくなかった。
俺は、そっとビールを注いでやる。
「やかましい、吠えるな駄犬。少しは静かに飲めんのか。」
カウンターの一番奥の席で、ミハイさんが心底嫌そうな顔をした。
「うるせえ!ほとんど働きもしねえ引きこもりコウモリ野郎!」
「失礼な。私は明晰な頭脳で財を成す術を心得ているだけのこと。貴様のような筋肉野犬には出来ん芸当だ。」
投資家として人間社会で成功しているミハイさんと、日々汗を流して働いている木戸。
そんなところも正反対だ。
「それで、貴様は泉実の前で吠えて、どうしてもらいたいのだ。頭を撫でてほしいのか、餌代をただにしてもらいたいのか、それとも泉実から貴様の尊敬する棟梁とやらに言いつけてもらいたいのか。」
棟梁のことがミハイさんの口から出て、俺は内心焦った。
この人、俺と棟梁の会話を盗み聞きしてるんじゃないだろうな。
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