二夜

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とりあえず、店にどうぞと誘うと。 男は一歩一歩確かめるようにゆっくり足を動かして、時間をかけて店に入ってきた。 待ち構えていた木戸とミハイさんが、ぽかんとする。 ぽかん・・・もしかして、この人のことを知っている? 「あの・・・木戸さん?ミハイさん?こちらの方をご存じなんですか?」 「・・・わああああ!!亀じゃん!本物の亀!!」 「人に化けても、動きだけでなく言葉ものろいか、亀よ。」 亀?この人が、亀!? 「はあー。こんばんはー。犬さんーとーコーモリーさーん。」 亀と呼ばれた男は、のんびりした口調で挨拶をしてきた。 「犬じゃねえ!狼だ!」 「コウモリではない!吸血鬼と呼ばんか!!」 さっきまでいがみ合っていた二人の反応が、ぴたりと一致した瞬間だった。 やるな、亀。
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