二夜

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亀の来店で毒気を抜かれたのか、木戸とミハイさんは自分の席に座り直す。 「カウンター席でもテーブル席でも、お好きな方へどうぞ。」 「はーいー。」 人間に化けているらしい亀は、ゆっくりカウンターの真ん中の席に座った。 両側にそれぞれ木戸とミハイさんが極力離れて座っているから、仕方ないわけだが。 「居酒屋まるの店主、烏丸泉実と申します。」 「あー、ご丁寧ーにー、どーうーもー。私ー、こーゆーものでーす。」 ゆったりとした動作で、名刺をくれた。 そこには、ここからそう遠くない町内会の副会長というなんとも人間社会に馴染んだ役職(?)とともに、「亀野 歩」と書いてあった。 読み方を尋ねると、「かめの あゆむ」となるそうな。 もうちょっとで「かめのあゆみ」になって、よりゆっくり感が出ていたところだ。 俺も、店名が書いてある名刺を渡した。
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